ホラー映画「蝋人形の館(HOUSE OF WAX)」

監督:ジャウム・コレット=セラ
アメリカ/2005年/113分 R-15

大掛かりなセットと手間をかけて作られたアメリカの典型的恐怖劇。「ステルス」の精神的・心理的背景を描いている? ジャパニーズホラー「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」との類似点やヒットの秘密も明らかに!

ストーリー(概要)
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カーリーとその親友のペイジはそれぞれ恋人を連れ、またカーリーの兄ニックとその友人も一緒に大学フットボールの試合を観戦するために車で移動していた。

こうして6人の若者たちは近道をして深夜の田舎道を走り、途中のでテントを張って一泊することにした。

翌朝、車のファンベルトが切れていたために、近くの町へやってきたカーリーとその恋人ウェイド。

カーナビの地図にも載っていないそこ(ルイジアナ州の田舎町アンブローズという名の町)は、丘の上に蝋人形の館が建っている、人影がない閑散とした町だった。

蝋人形の館に足を踏み入れたときから、若者たちが次から次に襲われて命を落としていく。


主な登場人物の紹介
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△カーリー
 女性。大学卒業後にNYの出版社でインターンとして働く予定。

△ニック
 男性。カーリーの双子の兄。

△ペイジ
 女性。カーリーの親友

△ボー/ビンセント
 男性。町のガス・ステーションの経営者

△ウェイド
 男性。カーリーの恋人


コメント・レビュー(Comments・Review)(論評、批評、意見)
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大掛かりなセットと手間をかけて作られたアメリカの典型的恐怖劇。「ステルス」の精神的・心理的背景を描いている? ジャパニーズホラー「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」との類似点やヒットの秘密も明らかに!

■ 国や地域による「恐怖」の違いとは?

「蝋人形の館」はアメリカンホラーの典型です。ほかに似たような系統で比較的最近の作品では「クライモリ」があります。どちらも基本は「身体的な恐怖」です。

見知らぬ土地で、異質な者に襲われて傷を負わされたり殺されたりといった、直接的に身体に襲い掛かってくる危険に対する恐怖です。

農耕か狩猟かという大雑把な分け方をすると、アメリカ合衆国は「狩猟」タイプです。フロンティアを目指して西に進み、狩猟(土地を奪って)きたという歴史があります。奪う者がいるということは、奪われる者もいるということで、いつ自分が奪われる側になるかもわからないので自衛します。

すると、奪う奪われるの関係は、ほんのわずかの力関係で逆転することがあるので、いつもビクビクして暮らしていなければなりません。そのため、裕福な人たちは集まって共同で用心棒を雇って自分達が住む地域を警備させるなんてこともします。

そういうわけで、アメリカ的な恐怖の対象は「霊」や「お化け」よりも、見知らぬ異質(だと感じる)相手(人間)なのです。

アメリカ合衆国の恐怖作品をいくつか思い出してみてください。そのほとんどの典型は「若者数人が田舎で殺人鬼に襲われる」というものだということに気がつくでしょう。「ジェイソンシリーズ」も「死霊のはらわた」(←これはある意味コント)「クライモリ」そして「蝋人形の館」。どれもストーリーの基本型は同じです。

車で移動
  ↓
見知らぬ土地
  ↓
異質な他者
  ↓
意味もわからず襲われる
  ↓
理不尽な恐怖 


■ アメリカ人にとってかなりこわい「理不尽な恐怖」

実は、直接的に身体に襲いかかっていくる危険は、表面的な恐怖に過ぎません。アメリカ人が一番怖いと感じるのはおそらく「理不尽な恐怖」なのです。

ジェイソンに襲われる若者たちも、「クライモリ」で森に迷い込んで襲われる若者たちも、なぜ自分達が襲われて殺されなかればならないのかわかりません。

たしかなことは、見知らぬ土地に足を踏み入れてしまったために襲われているということです。だから登場人物たちはいつもこう言います「はやくここから抜けだそう」――と。

そして脱出だけを試む者は次々に殺害されます。そこで、危険の元を潰そうと主人公たちが戦いを挑みます。こうして最後には恐怖の元を叩き潰して、主人公+ひとりといった人数だけが生き残るのです。


■ アメリカンホラーとベトナム戦争

アメリカンホラーの典型を、ベトナム戦争を例に考えてみましょう。

自国から遠く離れた異国(見知らぬ土地)でベトコン(異質な他者)と戦うアメリカ兵たち。自分達は世界の平和のために戦っている(正しいことをしている)のに、なぜ彼ら(ベトコン)は攻撃してくるのか。次から次に戦友が命を落としていくなか、異質な他者を排除しようとやっきになるが、地の利は相手にあるためにうまくいかない。それでも大事な戦友をひとりでも多く救い出して脱出しようとする。

これは、アメリカンホラーと構造が似ていませんか?


■ どこかにあるかもしれない恐怖の芽は早めに摘み採っておく?

「蝋人形の館」のレゾリューション(解決)シーンで、救急車をはじめとする車両や保安官達が町にたくさんやってきます。そして傷の手当てを受けている登場人物のひとりが「どうしていままでこの町のことに気がつかなかったんだ」ということを訊きます。すると保安官は「10年前に工場が閉鎖されてから地図にも載っていないのでわからなかった」といった意味のことを答えます。

知らない場所で、知らないうちに自分達の安全を脅かすものがある。もしそういうものをちょっとでも見つけたならば、それがやがて大きな危険になるまえに叩いておこう。

そんな、いつもビクビクせずにはいられない心裡がよく表れているのが例えば「ステルス」なのかもしれません。
「ステルス(STEALTH)」 作品レビュー


■ 「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」がアメリカ合衆国でヒットしたワケとは?

「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」の恐怖の本質とはズバリ「理不尽な恐怖」です。

これにいち早く気がついたのがサム・ライミさんです。「スパイダーマン」や「死霊のはらわた」の監督でもある彼は、呪怨にアメリカ人にとってすごく怖い要素をすぐに嗅ぎとったのでしょう、「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」のプロデューサーをしています。彼は監督としてだけでなく、プロデューサーとしても凄腕のようですね。

「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」では、主人公のアメリカ人女性カレンは見知らぬ土地(日本)で異質な他者(日本人)に出会い、ある一軒家に足を踏み入れたことから、意味もわからず襲われるようになります(理不尽な恐怖)。

そもそも、アメリカ人にとって不慣れな外国生活は不安に包まれて緊張感を強いられているためにそれだけで苦痛なのに、ある一軒家に足を踏み入れただけで襲われるとうのは、かなり恐ろしいものなのです。

こうしてみると「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」での日本を「蝋人形の館」でのルイジアナ州の田舎町アンブローズに置き換えてみることもできるでしょう。

さらに「呪い」という異国の異質なニオイがプンプンする要素が新鮮で、なおかつビデオデッキやテレビなどの電気製品で身近だと思っていた日本が実はとんでもないアメージングワールドだということで、やはり(?)摩訶不思議意な国だったのか! という思いも手伝って、アメリカ人にとっては新鮮な恐怖としてのインパクトが強かったようです。

「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」では、ある一軒家に足を踏み入れただけで、アメリカ人であろうと日本人ろうと襲われるのですから、まさにアメリカ人に合った(好みの)「理不尽な恐怖」をより一層異質な土地で体感させてくれたというのが「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」ヒットの要因だといえるでしょう。

「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」作品レビュー

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呪怨関係の補足とまとめのレポートはこちら

『「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」徹底解説〜ハリウッドがジャパンホラーを買いたがる理由〜』
ジャパンホラー大ヒットの秘密を徹底解説!エンターテイメントホラーの傑作映画「THE JUON/呪怨(THE GRUDGE)」がハリウッドでヒットした理由とは?ビジネスマンも必読のマーケティング手法満載。
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■ 映画のために作られた町 

ルイジアナ州の架空の町アンブローズは、映画の撮影のために作られた町です。映画のために町をひとつ作っちゃったんです。ガス・ステーション、ペットショップ、映画館、理髪店、雑貨店、民家、教会。それにトルーディーの蝋人形館。どれも映画のためだけに作られたというのですから、実はかなり大掛かりなセットを使っているのです。

さらに、蝋人形館のセットには20トンもの蝋が使われたとか。映画のクライマックスでドロドロと溶けて崩れていく蝋人形館のシーンはかなり貴重なものですよ。なにせあれだけたくさんの蝋が溶けていくことなんて日常生活ではまず見れませんから!

「蝋人形の館」で使われた人形はすべて、実際の人間の複製です。エキストラさんの体の型をとって、それを元にファイバーグラスとシリコンの型が作られたのです。というわけで、作品に登場する蝋人形とそっくりな外見の方が実在するということなんですね。

あなたの家の居間に、自分そっくりな蝋人形を一体いかがですか?(笑)

 
■ ひとこと

町の映画館では『何がジェーンに起ったか?』(1962年)が上映されています。作品の内容が、兄弟姉妹というキーワードで共通しているそうです。

アメリカンホラーのお約束、巨乳系のおネェちゃんが登場します。

いわゆる恐怖劇ですので、怖いものが苦手という方には向きません(あたりまえですね^^;)

それと、痛系のシーンがけっこうあります。

国や地域による恐怖の対象と描き方に興味がある方にはよいお手本となるでしょう。

TVドラマ「24 TWENTY FOUR」で人気のエリシャ・カスバート(カーリー役)のファンの方、ホテル王ヒルトンの令嬢でセレブリティのパリス・ヒルトンの噂の死に様(?)をご覧になりたい方はどうぞ。



posted by タカ at 15:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | スプラッター

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